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近世後期を中心とした待遇表現の地域差に関する歴史社会言語学的研究
研究課題/領域番号:21K00549
2021年4月
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2026年3月
日本学術振興会
科学研究費助成事業
基盤研究(C)
森 勇太
配分額:3770000円
(
直接経費:2900000円
、
間接経費:870000円
)
研究の目的は,待遇表現の地理的・歴史的変種を調査することで,各変種の待遇表現の運用の差異がなぜ,どのようにして生まれてきたのかを明らかにすることである。本研究は「[1]行為指示の談話的研究」と「[2]各方言の待遇表現についての研究」の2つの研究を柱にしているが,このうち2021年度には,以下の研究を実施した。
[1]行為指示の談話的研究=行為指示表現において受益表現(「―くれ」「―ください」等)が使われるようになった過程について調査を行い,日本語学会にて発表した。中世の資料において,主従関係にある人物間では,そうでないときに比べて受益関係が用いられにくい。また,動作の内容としては,上位者への懇願や無理なお願いで受益表現が使われやすく,発話場で即時完結するような動作には受益表現が用いられにくい,ということを明らかにした。
[2]各方言の待遇表現についての研究=近世後期における上方(京・大坂)と江戸の丁寧語の運用について,洒落本資料を対照した調査を行い,日本語文法学会にて発表した。上方では,丁寧語を高頻度で使用する話者がほとんどいなかったのに対し,江戸では丁寧語を高頻度で使用する話者が多かった。このような丁寧語使用の地域差は,丁寧語の発達・浸透の段階にある社会言語学的状況を反映させていると考えた。なお,上方の方言の歴史に関して,待遇と関係する助詞「イナ」「イヤ」の歴史について調査し,研究論文を発表した。「イナ」が近代以降の上方で疑問文との結びつきを強めたため,命令表現に接続する「イヤ」が成立したと考えた。
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方言昔話資料のデータベース化と言語研究への活用
研究課題/領域番号:23H00635
2023年4月
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2028年3月
日本学術振興会
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
三井 はるみ, 井上 文子, 野間 純平, 仲原 穣, 日高 水穂, 森 勇太, 酒井 雅史, 高木 千恵, 竹田 晃子, 橋本 礼子, 松丸 真大
配分額:18200000円
(
直接経費:14000000円
、
間接経費:4200000円
)
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評価性を伴う形式としての指示詞の研究
研究課題/領域番号:23K00551
2023年4月
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2027年3月
日本学術振興会
科学研究費助成事業
基盤研究(C)
堤 良一, 岡崎 友子, 朴 秀娟, 藤本 真理子, 又吉 里美, 竹内 史郎, 森 勇太
配分額:4030000円
(
直接経費:3100000円
、
間接経費:930000円
)
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『瀬戸内海言語図巻』の追跡調査による音声言語地図の作成と言語変容の研究
研究課題/領域番号:21H00530
2021年4月
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2025年3月
日本学術振興会
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
友定 賢治, 松田 美香, 村上 敬一, 峪口 有香子, 塩川 奈々美, 酒井 雅史, 大西 拓一郎, 脇 忠幸, 灰谷 謙二, 小西 いずみ, 又吉 里美, 白田 理人, 小川 俊輔, 岩城 裕之, 有元 光彦, 岸江 信介, 中東 靖恵, 森 勇太, 山本 空
配分額:14820000円
(
直接経費:11400000円
、
間接経費:3420000円
)
22年は、遅れている調査を進め、調査予定地点のデータを収集して、『瀬戸内海言語図巻』追跡調査による言語地図作成に取り掛かる予定であった。しかし、2020年3月以降、新型コロナ感染拡大によりフィールド調査ができない状況は、22年度も続いており、調査はごくわずかしか出来なかった。特に、本研究の調査対象地域は、医療施設が十分でない瀬戸内海島嶼部であり、話者は重症化リスクの高い高齢者で、調査時間は2時間以上かかるという条件のため、対面調査は考えられなかった。
そこで、22年度は、すでに調査が出来ている110地点ほどのデータをデータベース化する作業に注力した。対面で計画していた地図作成講習会が開催できず、地図作成作業に取り掛かることは出来なかった。それと、音声言語地図作成のための音声データのデータベース化も本格的に取り掛かり、音声言語地図の試作も始めた。
研究発表会は、2022年9月と2023年3月の2回実施、それぞれ研究発表1件、ゲストの講演1件で実施することができた、
本研究は、予定地点の調査が終わり、言語地図を作成しないと、目的である瀬戸内海地域の言語変容を考察するのは難しい。そのため本年度も論文等を書くことが出来ず、成果発表は、研究発表会での口頭発表にとどまった。
コロナをめぐる状況が変わり、23年度は、以前ほどは無理だとしても、調査ができる可能性は高いので、特に、兵庫県淡路島、香川県小豆島、愛媛県大三島、山口県周防大島の4島で集中的に調査するよう準備している。また、調査データのデータベース化をすすめ、言語地図、音声言語地図の作成に取り掛かる予定である。研究発表会は2023年9月と2024年3月の2回実施する。
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『全国方言文法辞典』データベースの拡充による日本語時空間変異対照研究の多角的展開
研究課題/領域番号:20H00015
2020年4月
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2025年3月
日本学術振興会
科学研究費助成事業
基盤研究(A)
日高 水穂, 青木 博史, 井上 文子, 大西 拓一郎, 小嶋 賀代子, 小西 いずみ, 小柳 智一, 酒井 雅史, 高木 千恵, 竹田 晃子, 仲原 穣, 中本 謙, 野間 純平, 橋本 礼子, 林 良雄, 平塚 雄亮, 前田 直子, 松丸 真大, 三井 はるみ, 森 勇太, 山田 敏弘, 矢島 正浩
配分額:44720000円
(
直接経費:34400000円
、
間接経費:10320000円
)
本研究の目的は、現代日本語の地域的多様性がどのようにして生じたのかを、歴史的言語変種と地域的言語変種にみられる文法項目の対照研究を通じて明らかにすることである。本研究課題に取り組むのは、これまで『全国方言文法辞典』作成のための共同研究に取り組んできた方言文法研究会のメンバーである。2021年度の主な研究成果を以下に挙げる。
1.研究成果報告書『全国方言文法辞典資料集(7)活用体系(5)』を刊行した。要地方言の活用体系記述として、北海道北見市常呂町岐阜方言、滋賀県湖東方言、愛媛県大洲方言、福岡県柳川市方言の記述を収録した。また、基本例文50要地方言訳として、福井県永平寺町方言、山梨県甲府市方言、山梨県南巨摩郡早川町奈良田方言、岐阜県岐阜市方言、岡山県新見市方言、山口県熊毛郡田布施町方言、福岡県福岡市方言、沖縄県国頭郡大宜味村津波方言の記述を収録した。
2.ウェブサイト「方言文法研究会2022サイト」を公開した。方言文法研究会提供のデータベースポータルサイトとして新規構築したもので、全国方言文法資料集、要地方言活用体系記述、日本列島方言区画図、基本例文50要地方言訳データベース(検索機能付)、『方言文法全国地図』略図集を閲覧・利用することができる。また、このサイト内で雑誌『方言』(1931~1938年、春陽堂)の目次一覧と著者没後70年超えの論文・記事のPDFデータを公開した。こうした既存の方言文献資料の整備・公開も本研究の課題の一つと位置づけている。
3.方言文法研究会2022年第1回研究例会(2022年3月28日、オンライン)を開催した。今後の発展的な研究課題の発掘と研究手法の共有のために、ワークショップ「文法現象からみる方言類型―ノダと関連表現を中心に―」、チュートリアル「Illustratorを使用した言語地図作成入門」、方言昔話研究班活動報告を行った。
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形式語に関する実証的・記述的研究の新段階
研究課題/領域番号:19H01267
2019年4月
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2022年3月
日本学術振興会
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
藤田 保幸, 中畠 孝幸, 岡崎 友子, 宮崎 和人, 丹羽 哲也, 江口 正, 山崎 誠, 砂川 有里子, 深津 周太, 塚本 秀樹, 三井 正孝, 小西 いずみ, 馬場 俊臣, 日高 水穂, 森 勇太, 辻本 桜介
配分額:11050000円
(
直接経費:8500000円
、
間接経費:2550000円
)
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『瀬戸内海言語図巻』の追跡調査による音声言語地図の作成と言語変容の研究
研究課題/領域番号:17H02340
2017年4月
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2022年3月
日本学術振興会
科学研究費助成事業
基盤研究(B)
友定 賢治, 松田 美香, 村上 敬一, 峪口 有香子, 酒井 雅史, 大西 拓一郎, 脇 忠幸, 灰谷 謙二, 小西 いずみ, 又吉 里美, 小川 俊輔, 岩城 裕之, 有元 光彦, 岸江 信介, 中東 靖恵, 森 勇太, 塩川 奈々美, 重野 裕美
配分額:16510000円
(
直接経費:12700000円
、
間接経費:3810000円
)
本研究は,藤原与一(1974)『瀬戸内海言語図巻』(上下2巻 東京大学出版会)の追跡調査を、3つの目的で行った。(1)音声言語地図による瀬戸内海域方言音声の保存については、約100地点の音声データが得られ、その切り出しをすすめている。(2)実時間言語変化の解明と言語地図分布解釈に関しては、西日本豪雨、新型コロナ感染拡大、島嶼部の人口減などの理由で、120地点ほどしかできなかったため、地図を作成できていない。(3)『瀬戸内海言語図巻』の少年層話者(女子中学生)のその後の言語習得については、大分県姫島、愛媛県中島、広島県大崎上島での結果をまとめた。特に注目したいのが、方言の習得である。
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地理的・歴史的変種の対照による行為指示表現の変化の研究
2017年
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2020年
文部科学省
科学研究費補助金(若手研究(B))
森 勇太
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日本語の時空間変異対照研究のための『全国方言文法辞典』の作成と方法論の構築
研究課題/領域番号:26244024
2014年4月
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2019年3月
日本学術振興会
科学研究費助成事業
基盤研究(A)
日高 水穂, 青木 博史, 小西 いずみ, 小柳 智一, 酒井 雅史, 高木 千恵, 竹田 晃子, 中本 謙, 野間 純平, 橋本 礼子, 林 良雄, 平塚 雄亮, 前田 直子, 松丸 真大, 三井 はるみ, 森 勇太, 矢島 正浩, 山田 敏弘, 小嶋 賀代子, 仲原 穣, 吉田 雅子
配分額:39650000円
(
直接経費:30500000円
、
間接経費:9150000円
)
日本語諸方言の文法を、現在の地理的変異(方言差)の様相と歴史的変化(時代差)のプロセスの両面から総合的に記述する『全国方言文法辞典』の作成を目的として、要地方言の活用体系の記述を行った。本研究期間内に活用体系記述の報告書を3巻刊行し、既刊の報告書に掲載したものとあわせて、本土方言38地点、琉球方言4地点の活用体系記述を完成させた。
また、日本語文法の歴史的変化と地理的変異を総合的に記述する枠組みを確立し、現代語、古典語、諸方言の文法を比較・対照する「時空間変異対照研究」の方法論を構築することを企図して、諸方言の文法記述と文献方言対照研究をテーマとした研究発表会を3回にわたり開催した。
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地理的・歴史的変種の対照による日本語の敬語の運用とその変化に関する研究
研究課題/領域番号:25884082
2013年
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2014年
文部科学省
科学研究費補助金(研究活動スタート支援)
研究活動スタート支援
森 勇太
担当区分:研究代表者
資金種別:競争的資金
配分額:2470000円
(
直接経費:1900000円
、
間接経費:570000円
)
本研究は,さまざまな地理的・歴史的な日本語のバリエーションにおける敬語の運用やその変化を対照し,敬語にはどのような変化が起こるのか,ということを統一的に理解することを目的とする。そのために,発話行為場面における敬語運用の変化を,授受表現や他の発話行為に関わる要素と対照させて研究した。
本申請課題では命令表現として,[1-1] 広島方言における連用形命令の導入,および大阪方言との対照,[1-2] 否定疑問形の東西差の形成を明らかにし,申し出表現については,[2] 鹿児島県方言の申し出表現における「くれる」の運用について明らかにした。
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地理的・歴史的変種の対照による日本語授受表現の運用に関する研究
研究課題/領域番号:12J00716
2012年
-
2014年
日本学術振興会
科学研究費助成事業
特別研究員奨励費
森 勇太
配分額:1100000円
(
直接経費:1100000円
)
本研究の目的は,日本語の授受表現の運用について,地理的変種と歴史的変種の対照によってその特徴を明らかにするものである。本年度は命令表現の地理的・歴史的変異,および「くれる」の運用の地理的変異について調査を行った。
[1]命令表現の地理的変異:近畿地方には動詞命令形を用いた命令法(命令形命令)と動詞連用形の外形を用いた命令法(連用形命令)が存在する。また地域によっては敬語を語彙的資源とした命令表現も用いる(以下,敬語形命令とする)。これらの地理的分布を確認すると,命令形命令は近畿全域にあるが,連用形命令は,大阪・京都・奈良を中心とした近畿の中心部に分布し,近畿周辺部には敬語由来の命令表現が存在することを明らかにした。全国に複数の命令表現が見られる地域があることから,近畿方言のように複数の命令表現が機能分担している運用は,他の地域にも共通していることが推測される。
[21命令表現の歴史的変化:現代語では,動詞の連用形に相当する形式で命令を行う"連用形命令"が西日本を中心に見られる。この連用形命令は宝暦頃から見られはじめるものであるが,連用形命令は近世上方において,敬語助動詞命令形「や」が終助詞と再分析され,「や」の前部要素が命令形相当の形式として独立し,成立したと考えた。
[3]「くれる」の運用の歴史的変異:本発表では,甑島里・長浜方言における「くれる」の遠心的用法(話し手から聞き手・第三者への授与・授益を表す用法)について述べ,中央語の「くれる」の変化と対照させた。「くれる」の変化のパターンについて,"維持"(里方言),"拡大"(長浜方言),"縮小"(中央語)が認められる。これらの変化の差異は当該方言で素材敬語を持っているかが要因となっており,素材敬語を失った長浜方言では「くれる」が上位者への授与・授益を示す用法で用いられることを述べた。
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日本語授受・受益表現の歴史的変化に関する研究
研究課題/領域番号:10J03398
2010年
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2011年
日本学術振興会
科学研究費助成事業
特別研究員奨励費
森 勇太
配分額:1400000円
(
直接経費:1400000円
)
現代語には,物の授受を表す授受表現(「やる」「くれる」など),および恩恵の授受をあらわす(「-てやる」「-てくれる」など)の受益表現がみられる。これらの語彙は中世末期ごろから文献にあらわれるが,一方で古代語では敬語語彙が活発に用いられる。本研究は日本語の談話運用が,敬語中心の運用から授受・受益中心の運用へ,より話し手中心の言語運用がなされるようになった歴史的変化を捉え,その経緯や動機を明らかにする。具体的には,行為指示表現(依頼,命令等)や申し出表現といった言語行動の場面に敬語や授受・受益表現がどのように用いられているかを調査した。本年度は,以下の4点を行った。
1文献調査:歴史的変化を述べるうえでは,まず歴史的にみられる資料によって授受動詞や敬語の運用について,調査がなされなければならない。本年は特に変化の進行段階にあたる近世期が重要であるので,近世期の資料(狂言台本『大蔵虎明本狂言』や浄瑠璃資料(近松門左衛門作品)を中心として,調査を行った。
2方言調査:言語運用を調査していく上では,話者がどのような意識のもとそれぞれの形式を用いているかを調べることが重要である。しかし,文献からだけでは当時の言語運用の実態を完全には解明できない。本年度は,富山県南砺市五箇山地方,鹿児島県瀬戸内町(奄美大島加計呂麻島)のデータを収集し,日本語のさまざまな方言の考察を通して,当地の言語運用を観察し,古典語のデータの裏付けを進めた。
3学会発表:研究成果を公表するため,学会発表を行った。本年度は土曜ことばの会(4月),筑紫日本語研究会(2月)等で発表を行い,意見を請うことができた。
4論文発表:研究成果を公表するため,論文発表を行った。
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