Grant amount：\2990000 （ Direct Cost: \2300000 、 Indirect Cost：\690000 ）

本研究は、経済格差がなぜ生じるのか、生産性や人口動態とどのように関係しているかを明らかにし、予想される人口動態と経済格差の関係のもとで望ましい医療と社会保障制度を検討するものである。令和5年度は、教育拡大と賃金格差の関係を説明する理論モデルの構築、および家族による介護がマクロ経済に与える効果を説明する理論モデルの構築を行った。
教育拡大と賃金格差の関係については、米国や英国の労働市場において大卒労働者の供給増加にもかかわらず、大卒と非大卒の労働者間賃金格差（スキルプレミアム）が拡大しているという現象が知られている。この一見矛盾する現象についてはスキル偏向的技術変化（SBTC）による説明がある。本研究においては、各国の大卒労働者の供給増加、大卒と非大卒間の賃金格差、ジニ係数で計測した賃金不平等のデータを調べた結果、賃金所得のジニ係数は必ずしも高度な技術進歩が見られる国で増加しているわけではないことを示した。その説明のため、本研究では教育選択のモデルを開発した。モデルからは賃金所得のジニ係数の推移に二つのパターンがあることが示され、パターンの違いが大卒と非大卒労働者の余命格差および能力主義的な報酬構造に依存することが明らかにされた。
介護がマクロ経済に与える効果に関する研究は、現役世代が高齢の親を介護することで生じる経済への影響を評価したものである。そこでは、現役世代は労働を供給して消費や貯蓄を行うだけでなく、高等教育を受けるかどうか、子どもを何人産むかどうかについても選択するとしている。親の介護は労働供給だけでなく、進学及び子育ての時間にも負の影響を与えるため、所得、大学進学率、出生率を通じてマクロ経済に影響することが示された。また、大卒と非大卒労働者の賃金格差および子供の数の格差についても検証し、これらの格差が社会厚生に負の影響を与えることを示した。

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Grant amount：\4290000 （ Direct Cost: \3300000 、 Indirect Cost：\990000 ）

This study has investigated what factors determine income inequality, how inequality changes over time, and what policy can reduce inequality. To investigate the determinants of inequality, this study has used Japanese prefecture-level data. The regression results have shown that public spending reduces income inequality by providing employment opportunities for low-income households. In addition, to explain how inequality changes over time, this study has developed a theoretical model that focuses on infant mortality, and shown that a decrease in infant mortality reduces poverty but increases inequality because the supply of skilled workers increases and wage income stagnates. Finally, using data on foreign aid, this study has shown that spending for pro-poor projects can reduce income inequality and that the inequality-reducing effect is larger in poor countries.

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Grant amount：\4810000 （ Direct Cost: \3700000 、 Indirect Cost：\1110000 ）

This study has investigated how development aid affects economic growth and welfare in recipient countries and what determines aid effectiveness. While many earlier studies have estimated the impact of aid on growth rates, this study has focused on the impact of aid on income distribution. The results have shown that aid for education and health sectors can reduce inequality. The study also has developed an index of governance, which is based on data on development efforts and outcomes, to provide an objective measure of state capacity.

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Grant amount：\4290000 （ Direct Cost: \3300000 、 Indirect Cost：\990000 ）

This study has investigated whether development aid is allocated efficiently. Using project-level data, we examined the inter-recipient allocation of aid in each sector and the inter-sectoral allocation in each recipient country. We also developed a theoretical model that explains the desirable allocation in each recipient and evaluated actual aid flows to some major recipients.

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Grant amount：\2200000 （ Direct Cost: \2200000 ）

本研究では、日本の多国籍企業が海外現地法人を設立する場合、親企業の出資比率がどのような要因によって決定されるかを分析している。多くの出資比率の決定要因に関する先行研究で扱われている企業、産業、受入国の特性に関する変数に加え、為替レートを決定要因として重視している点が本研究の特徴である。
為替レートが出資比率に影響を与える理由として以下のメカニズムが考えられる。不完全資本市場を仮定した場合、企業が持つ現金、自己資本、株価等が投資に正の効果をもつことが知られており、実証研究でもそのような効果が確認されている。このような投資への資産の効果(または金融制約の存在)を考慮すると、円高は、海外へ投資する日本企業にとって、相手国通貨で測った資産が増加すると同じ効果を持ち、その国への投資金額を増加させる効果をもつことになる。
本研究では、このような不完全資本市場における投資のモデルを利用し、日本の多国籍企業約60社の現地法人のデータを用いて出資比率の決定要因を調べている。先行研究で用いられた様々な変数(企業の技術、経験、業種、受入国のガバナンス等)をコントロールしても、為替レートは出資比率に有意な効果を与えるという結果が得られた。本研究ではさらに、推定された為替レートの効果が、為替レートと直接投資の関係を説明している他の理論仮説によって説明可能かどうかを検討した。その結果、本稿で得られた為替レートの効果は、資本市場の不完全性によって最もうまく説明されることが明らかとなった。

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